白い足袋の不思議

つい先日、着物を初めて着ました。皇居での拝謁の機会に恵まれたからです。
着物にもいろいろ種類がありますが、今回私が着たのは色留め袖。色留め袖は主にフォーマルでおめでたい席で着用され、上半身に柄がないことが特徴です。夏に浴衣は着ますが、きちっとした着物は着たことがなかったので、どんな感じかドキドキワクワク。
下着、長襦袢、着物と重ね着をしていき、帯をしめてもらったら、今までのどんな洋服よりも身も心も引き締まる思い。へぇ、着物って素敵!
そして今回、最も心を動かされたのは、着物全体をさらにきりりと総仕上げするかのような、あるアイテムでした、それは真っ白な「足袋」。
普段滅多に白い靴下ははかないので、足元の白はまぶしいくらいに新鮮でしたし、靴下・タイツ類がニットなのに対し、足袋は布でできていますので履き心地がまったく違います。
足袋特有の布のフィット感、決して悪いものではなく、不思議な「包まれ」感でした。
それにしても一つの疑問が浮かんできました。なぜ足袋は白いものが一般的なんでしょう。 早速調べてみました。
すると布製の足袋が普及する以前、室町~戦国時代には鹿革製のものが主流で、主には外出の時に履かれていたようで、白く染めていたというからびっくり。江戸時代に入ると江戸城内の女性用には鹿革を紫色に染めるようになっていったそうです。しかし明暦の大火(1657年)以降、革の値段が高騰し、革→廉価だった木綿へと変化。革は洗えないし、長時間履くと蒸れて悪臭を放ったという理由から、その後は衰退していきます。
江戸時代の中期になると町人文化が栄えていき、庶民の間でもファッションとして、あるいは防寒目的のため年間を通して足袋が履かれるようになっていきました。
白足袋は礼装用として、普段用には薄柿色や黄、浅黄、萌黄(男性用は紺、黒、鼠)といった色足袋や、小紋染め足袋なども履かれていたそうです。
江戸後期になるとビロードや更紗などの輸入生地で足袋を作って楽しむ人達も現れ、後に「別珍足袋」「コール天足袋」に発展していきました。 男性は普段は黒を履くのが一般的だったようです。関西では黒ではなく紺色が好まれたそうです、現代にも通じる感覚があり(例えば黒と紺のビジネススーツなど)、なかなか興味深い話ですね。 職業によって足袋の色が違うという話もあり、たとえば藍染めの衣装を着た職人さん達は青縞の足袋を履き、奴さんは紫色、茶坊主はウコン(黄色)など。
今では白以外にも男女とも様々な色足袋や柄足袋が販売されており、着物の色に合わせて楽しんでいます。靴下と合体した足袋ソックスなるものも登場し、カジュアルシーンで着用されています。
しかし色足袋や柄足袋が登場するも、やはり「足袋=白」の印象が最も強いのはなぜでしょう。
いろんな説があるそうですが、大きくは二説あるようです。一つには「白=清潔の象徴」であること。白は最も汚れやすく、常に新しいもの、清潔なものである必要があり、引いてはそれが相手に対する礼儀につながる、日本人特有の心の現れがあるようです。
もう一つは「白=清浄の象徴」。白足袋は正装時や慶弔等の行事、儀式、国技の際や茶人、僧侶、茶人、能楽師、歌舞伎役者などによって、いずれも清浄を示すシーンで着用されている。
白には身も心も引き締める作用があるようですね。
たとえ色足袋であったとしても、そのほとんどのものが裏は白の場合が多く、カジュアルな装いであったとしても「清潔、礼節」を忘れないでいるんだな、と思いました。これが単なる「なごり」にならない世の中であって欲しいなと節に祈ります。