ライター紹介

某ファッション研究所 ディレクター
多くの百貨店、GMS、専門店に対してマーケティング、トレンドのディレクションのみならず商品企画、売場作り、ブランド開発にいたるまで幅広く活動。
昨年の新聞記事に気になる話が掲載されていました。
2010年10月6日の朝日新聞に載っていた福助さんのレッグに関するインタビュー記事です。
...「薄いタイツはありますか」。
最近、レッグウェアを販売する同社の直営店で、そんな尋ね方をする若い女性がいるという。
何かと思えばストッキング。
いまの30代は学生時代に「生足」がブームになり、ストッキングをはかない習慣の人もいる。
一方の20代は、同じ年ごろにカラータイツが流行。
足に何かをまとうことに抵抗がなく、足に着けるものを「タイツ」と呼ぶ...。
...知りませんでした、そういう事実。
年がばれることを平気でお話すると、私達が中学生や高校生の時(今から30年ほど前の1970 年代末〜80 年代のことです><)は、日本国中ほぼ全部の中高生がストッキング、もしくはストッキングに靴下、というスタイルで通学していました。ちょうど『愛と誠』といった
学園コミックが大人気で、それらに出てくる女学生のようにスカート丈は完全にロングが主流、マキシ丈もたくさんいました(ミニが主流の今とは正反対ですね)。スケ番が流行っていた時代です。
まじめな子達はベージュ系を、ちょっと不良っぽい子、あるいは大人びた子達は黒のストッキングを着用。
あの時はタイツなんて若い子は誰も履かなかった、タイツを履くのは小学生かおばあちゃん。
地厚のタイツ=ダサイ、の代物だった。
学生だけではなく、人前で素足をみせることは恥ずかしいこととされ、若いOLさんはもちろん、大人達もみんなパンストを履いていた時代、むしろパンストを履かないのが非常識、といった風潮さえありました。
しかし1990年くらいから制服のスカート丈がだんだん短くなっていき、95年にルーズソックスが登場し、
1999年には空前の生足ブームが始まりました。その頃から学生をはじめ、女性達は徐々にパンストを履かなくなっていきます。
先ほどの朝日新聞の説明には、今から2年前の2009年のパンストの生産量は約1億3千万足で、パンスト最盛期の1989年に比べるとなんと10分の1。
いかにパンスト人口が減ってしまったかが数値としてもよくわかります。
今、パンストを履く若い人達のほとんどが職場用や就活用などの義務着用で、普段やちょっとしたお出かけの時など、プライベートシーンに進んでパンストを履く人は激減してしまいました。カジュアルウェアが主流になったこと、パンツスタイルの台頭、対人マナーの変化、価値観の変化などが挙げられるでしょう。
しかし最近では「パンスト業界をどないかせにゃいかん!」と、パンストメーカーが奮起し「パンスト女子」なる言葉を流布させたり、従来のパンストイメージを払拭するかのような新しいパッケージやコンセプトでの戦略、あるいは「伝線」しにくいパンストや着圧パンスト、UV吸収加工など、パンストの弱点をカバーする商品を考案し、素材開発にも力を注いでいます。
私と同じ会社に勤務している20代女性も「パンスト=何かの理由で履かなきゃいけないモノっていう感じがして、名前自体に抵抗がある」、といいます。
冒頭の話にも共通しますが、今の多くの若い人達にとって「パンスト」はイヤだけれど、「薄いタイツ」という呼び方なら抵抗がないのかもしれません。
最近は30〜50デニールあたりの、うっすらと素足が透けて見える厚み...確かにストッキングと呼んだらいいのか、タイツに属するのかわからないような、非常にボーダレスな厚みのもの...の需要が一年を通して高まってきています。若い人達にも抵抗がなく、ストッキング愛好家達にも納得してもらえるような、何かいい名前を考える時期にきているのかもしれませんね。
...ほら、長〜い年月にわたって人々から忘却されていたのに、つい5年ほど前から「レギンス」という新しい名前で呼ばれることで、一気にオシャレ感を身につけリベンジに成功した、80年代の「スパッツ」のように...。
